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この歳になり思うことがある。それは「雑学の力」について・・・。
看護師にとって、医療や看護についての勉強は生涯怠ることはできない。そう思って手当たり次第に医学書や参考書を読み漁った時期がある。しかし医学の知識も看護の知識も時代と共にどんどん進化し、追いつくことはなかなか難しい。吸収するにも限界があるように思う。
看護主任になって間もなくの頃、それまで学んだ医学や看護の知識は、実際の現場であまり役に立っていないな・・・と感じることが多くなった。
その感覚に追い打ちをかけたのは、中学・高校の同期数人と食事をした時だ。社会人として働いている彼ら彼女らの話に私は全くついていけなかった。医学や看護の話ならいくらでも話せるのに、世間のことが何もわかっていない・・・。何かがおかしい・・・。そう感じるようになった。
これはまずい・・・そう思って、日々のニュースや報道番組などに耳を傾けるようになった。また医学や看護に関係のない書籍を読むことも多くなった。歴史小説・ミステリー・エッセイ集・戦術本などなど・・・。茶道・華道・着付けなど日本の伝統文化を学び始めたのもこの頃からだ。
そんなことをしばらく続けているうちに、患者さまやご家族、スタッフとのコミュニケーションが楽にとれるようになった。(もともと人間嫌いな私は、人とコミュニケーションをとる時、顔には出さないがいつも相当エネルギーを消耗していたのだ。)
看護師という職種を選ぶ人は、おおむねまじめで一途な人が多い。その覚悟と姿勢は素晴らしいと思う。専門職として、誰もが本当によく学んでいる。
しかし言うまでもないが、私たちが接する多くの方たちは、病を得た患者である前に、心も人格も持ち合わせた人生経験豊かな先達だ。目の前の人間がいくら専門的知識・技術・経験が豊富でも、そんなことを見極められる患者や家族は多くないはずだ・・・。相手が信頼に値するかどうかの判断基準はもっと別にあるのではないかと思う。
看護師である前に、ひとりの人間として、またひとりの社会人として深みがあるかどうかが、相手の信頼を得られるひとつの鍵なのではないかと感じるのだ。
長く看護師を続けるのであれば何でもいい、専門職としての学び以外に、別な分野にも少しだけ興味を持ってみてほしい。もしかしたら自分の中の知らない自分に出会うことができるかもしれない。きっとそれは自分自身に新たな価値観とゆとりを生み出し、今までとは違った見方、考え方を可能にするきっかけを与えてくれるように思う。雑学は人間を成長させ、器を広げてくれる。
我が母校の創設者、福沢諭吉は「学問のススメ」。
天使病院看護部長の私は「雑学のススメ」だ。
看護部長 本間久美子
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