当院は、八王子中心部から12㎞ほど西に位置し、のどかな自然の中にある地域密着型の病院です。
日々、地域の患者さんのために医療を実践することを肝に銘じ取り組んでおりますが、我々が医療に従事するにあたり、未だ解決されていない疑問に直面することが多々あります。
そのような疑問を科学的に分析し、明日への診療に結び付けるのが臨床研究であり、当院も科学的な医療を志向し、臨床研究を推し進めて行くことで、少しでも医療の発展に寄与できれば、幸いと考えます。
さて、臨床研究を推進するにあたり、患者さんや職員の個人情報の保護、権利の保障など、考慮しなくてはいけないことがあります。また、価値のある臨床研究を発表するまでには、色々と障害があるかもしれません。
そこで、各研究が適正に遂行されるようサポートし、かつ、不正が起こらないよう監視し、各医療者が研究に専念できる環境を提供するための組織が当院の臨床研究部です。
当院の臨床研究は、臨床研究法( https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=429AC0000000016 )に基づき厳正に執り行われます。
幸い当院のリハビリスタッフの中には、大学で博士課程にすすみ、研究をしたいという者もおり、その成果が論文になってもおります(英文論文5、和文論文1、2)。そのような動きも、当院での臨床研究推進を後押ししております。
当院はこれまで薬剤の治験を積極的にこなしてきました。薬剤の治験は、患者さんの協力が必須な介入試験であり、患者さんの権利を保障するしっかりとした倫理観とそれを実行する世界標準の制度を持ち合わせていなくてはいけません。
多くの治験に参加した経験が、これから行ういろいろな臨床研究の役に立つことと思います。
尚、当院の倫理審査委員会を通過した臨床研究は、ホームページ上で随時開示していきます。また、研究成果も公開していく予定です。
臨床研究部について
はじめに
当院の研究の方向性
睡眠研究
当院は、西多摩地区で唯一の日本睡眠学会専門医療機関であり、生理検査技師が駐在し、質の高いポリソムノグラフィー 検査を行っております。
その結果、1500人以上のCPAP治療患者さんをフォローしております。一施設でこれだけ多くの患者さんをフォローしているので、臨床の疑問に対して、迅速に答えを出しえる環境を有していると言えます。
この環境を最大限に生かし睡眠医療の発展に貢献していきたいと考えます。
リハビリ研究
当院は回復期リハビリ病床を有し、地域の急性期病院からのリハビリ依頼に積極的に対応しております。
リハビリ科のスタッフには、臨床研究に興味関心を持つ者が多く在籍し、大学院で研究を深めている者もおります。
そのようなつながりを生かして、大学との共同研究にも積極的に参加していきたいと考えます。
治験
新薬を速く患者さんの元に届けることも医療機関の使命と考えており、治験には積極的に関わっております。
その他の臨床研究
その他、医師だけでなく、看護師、技師をはじめとしたコメディカルと一緒により良い臨床研究を行い、患者さんに少しでも還元できる成果を出せるように取り組んで参りたいと思います。
また、新たな仮説を証明しようとした場合、一施設の患者さんの協力だけでは、対象患者数が少なくて、統計学的に有意 な事象なのか証明できないことも多々あります。そのような仮説でも多くの施設が協力して研究を行えば、仮説の真偽を検証することができる可能性が広がるため、多施設共同研究にも積極的に協力しようと思います。
臨床研究部組織
臨床研究部
部長 : 別役徹生(院長)
睡眠研究室
室長 : 高崎雄司(睡眠呼吸障害センター長)
研究員 : 別役徹生、松田恭平
リハビリ研究室
室長 : 松田恭平
研究員 : 細山隼平
治験管理室
室長 : 別役徹生
研究員 : 平田篤志(薬剤科科長)
総合臨床研究室
室長 : 後藤大祐
当研究部研究者の職務規定は、医療社団法人玉栄会職員業務分掌規定の中に示します。
また、採用規定などは、東京天使病院臨床研究部職員採用規定に示します。
大学との関係性
過去の実績では杏林大学大学院保健学研究科リハビリテーション科学分野で学位取得を目指すものが継続的に生まれてます。東海大学八王子病院、東京医大八王子医療センター、杏林大学医学部などより、非常勤医師が当院での診療にあたっていますが、当院での資源を生かし研究活動に従事したい者には、その環境を提供することを目指します。
倫理委員会
当委員会は、東京天使病院における診療及び臨床研究を適正に推進するために、医の倫理の在り方についての必要事項を検討するため、研究者から申請された研究の実施計画の内容及び計画の実行並びにその成果の公表について審査しています。また、患者さんの権利に関することについても審議を行っております。倫理委員会の規定は倫理委員会規定に示します。
倫理委員会は、様々な立場の人で構成され、必要条件は以下のとおりです。
a.医学・医療の専門家等、自然科学の有識者
b.倫理学・法律学の専門家等、人文・社会科学の有識者
c.研究対象者の観点も含めて一般の立場から意見を述べることのできる者
d.倫理審査委員会の設置者の所属機関に所属しない者
e.男女両性で構成されていること。
倫理委員会は下記メンバーの半数以上かつ、a〜eの構成員のすべての出席をもって開催とします。
2022年度倫理委員会メンバー、尚、メンバー外の職員も倫理委員会の聴講を認めますが、議決権はありません。
a | b | c | d | e | 役職 | |
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別役徹生 | ● | 男 | 院長/臨床研究部長 | |||
後藤大祐 | ● | 男 | 副院長 | |||
渡邊正司 | ● | 男 | 診療部長 | |||
梶原直央 | ● | ● | 男 | 東京医大八王子医療センター呼吸器外科教授 | ||
中村広志 | ● | ● | ● | 男 | 中村法律事務所 弁護士 | |
福井典行 | ● | 男 | 事務長 | |||
村松寛 | ● | 男 | 看護部長 | |||
細山隼平 | ● | 男 | リハビリテーション科長 | |||
平田篤志 | ● | 男 | 薬剤科長 | |||
本間久美子 | ● | ● | 女 | 看護部長 |
研究者の心構え
当法人で研究をするにあたりその心構えを研究活動に関する行動規範に示します。
研究計画の立案、実施、成果の公表、学会参加に関する指針
当法人に所属する職員の研究に関して、立案から結果の公表に関する一連の流れは、科研費を受けて行う研究のために作成した公的研究費などの取り扱いに関する行動規範と同様に行います。
データの取り扱い
東京天使病院でのデータの取り扱い、公開に関する基本姿勢はデータの公開に関する基本方針に示します。
研究費管理
東京天使病院における研究者等の研究費の取り扱いに関する行動規範(不正行為防止の具体的な対策を含む)を公的研究費などの取り扱いに関する行動規範に示します。各研究者には不正行為に関わらないよう宣誓書(研究者宣誓書)に署名をしていただきます。臨床研究部の運営管理役割分担を以下に記します。
役割分担
最高管理責任者 : 医療法人社団玉栄会理事長
統括管理責任者 : 院長/臨床研究部長
コンプライアンス推進責任者 : 総務部長
不正通報窓口 : 経理部長
東京天使病院での研究活動における不正行為への対応
公的研究費などの取り扱いには、細心の注意を払い、不正行為が生じないよう東京天使病院における公的研究費等の取扱いに関する要綱で対策しました。
また、不正を見つけた場合の通報窓口は経理部長として、窓口の設置を職員、患者、出入り業者など、当法人に関わる人の目の振れやすいところに掲示し広く周知します。
東京天使病院における研究活動の不正行為に係る告発受付窓口の設置について
治験について
新薬の開発のスピードは薬の開発、デザインの手法の進歩に伴い飛躍的に進んだと言えます。しかし、折角良い薬が開発されても、その安全性と有効性が科学的に示されなくては患者さんの手元には届きません。
国(厚生労働省)から「薬」として認可されるためには、病気に効果があると考えられる物質について、動物実験や化学実験を行い、人に使用しても安全と予測されるものが「薬の候補」となります。次に、この「薬の候補」については、動物で効果や毒性を調べるだけでなく、健康な人や患者さんの協力によって、人での効果や安全性を調べることが必要です。このようにして行った試験・成績を国(厚生労働省)が審査して、有効性と安全性が承認されたものが「薬」となります。
この人における試験を一般的に「臨床試験」と呼んでおり、「薬の候補」を用いて国の承認を得るための成績を集める臨床試験は、特に「治験」と呼んでいます。「治験」は患者さんの同意(自由意志)に基づいて行われます。
なお、「治験」の実施にあたっては、治験に参加される方の人権と安全性を優先して行わなければなりません。そのため、「治験」は、国(厚生労働省)が定めた基準(医薬品の臨床試験の実施基準:GCP)に従って行われます。
当院では、治験に精通した外部SMOの協力のもと、臨床研究部長を治験管理室室長とし、治験運営をしております。また、治験専門病院であるピーワンクリニック( ホームページ : https://p1-clinic.or.jp/about.html )とは当院のMRIなどの設備を利用していただいたり、被検者さんの心電図変化に対して専門的コメントをしたり治験協力をしております。
東京天使病院の治験/観察研究実績と今後の予定
東京天使病院の治験
- 2014年
-
慢性心房作動
フェーズIII
17例
-
アルツハイマー型認知症に伴う行動障害
フェーズII
1例(途中で試験中止)
- 2015年
-
慢性心房細動
フェーズIII
8例
-
高TG血症
フェーズIII
4例
- 2016年
-
2型糖尿病
フェーズIII
5例
- 2018年
-
非弁膜症性心房細動
フェーズIII
11例
- 2020年
-
心房細動
フェーズII
18例
医師主導多施設共同観察研究
- 2010年
-
Garfield AF
心房細動
- 2012年
-
EXPAND Study
抗凝固薬
- 2016年
-
ANAFFIE試験
心房細動
今後の予定
ナルコレプシー フェーズIII
心房細動 フェーズIII
臨床研究実績
英文論文
1)Mikami T, Hirabayashi K, Okawa K, Betsuyaku T, Watanabe S, Imamura Y, Tanizawa K, Hayashi T, Akao M, Yamashita T, Okumura K. Laboratory Test Predictors for Major Bleeding in Elderly (≥80 Years) Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation Treated With Edoxaban 15 mg: Sub-Analysis of the ELDERCARE-AF Trial. J Am Heart Assoc. 2022 Sep 6;11(17):e024970.
2)Piccini JP, Caso V, Connolly SJ, Fox KAA, Oldgren J, Jones WS, Gorog DA, Durdil V, Viethen T, Neumann C, Mundl H, Patel MR; PACIFIC-AF Investigators. Safety of the oral factor XIa inhibitor asundexian compared with apixaban in patients with atrial fibrillation (PACIFIC-AF): a multicentre, randomised, double-blind, double-dummy, dose-finding phase 2 study. Lancet. 2022 Apr 9;399(10333):1383-1390.
3)Batra G, Ghukasyan Lakic T, Lindbäck J, Held C, White HD, Stewart RAH, Koenig W, Cannon CP, Budaj A, Hagström E, Siegbahn A, Wallentin L; STABILITY Investigators. Interleukin 6 and Cardiovascular Outcomes in Patients With Chronic Kidney Disease and Chronic Coronary Syndrome. JAMA Cardiol. 2021 Dec 1;6(12):1440-1445.
4)Pope MK, Hall TS, Schirripa V, Radic P, Virdone S, Pieper KS, Le Heuzey JY, Jansky P, Fitzmaurice DA, Cappato R, Atar D, Camm AJ, Kakkar AK; GARFIELD-AF investigators. Cardioversion in patients with newly diagnosed non-valvular atrial fibrillation: observational study using prospectively collected registry data. BMJ. 2021 Oct 27;375:e066450.
5)Suzuki T, Hashisdate H, Fujisawa Y, Yatsunami M, Ota T, Shimizu N, Betsuyaku T. Reliability of measurement using Image J for reach distance and movement angles in the functional reach test. J Phys Ther Sci. 2021 Feb;33(2):112-117.
備考:2)3)4)は治験参加していたため、Investigators に加わっているもの
和文論文
1)成人女性における internal focus of attention および external focus of attention に基づく言語教示が最大等尺性膝関節伸展運動時の筋力に及ぼす影響
鈴木尭之、橋立博幸、八並光信、清水夏生、内田智裕、佐々木良、別役徹生 理学療法東京 (8): 3-7、2020.
2)健康な若年成人男性における internal focus of attention に基づく言語教示が最大歩行速度に及ぼす即時的影響
鈴木尭之、橋立博幸、太田智裕、清水夏生、佐々木良、別役徹生、八並光信 理学療法学 47(suppl-1): 412-412、2020.
3)睡眠時無呼吸症候群のわが国における現状
高崎雄司
THE LUNG perspectives 24(1): 19-23,2016.
4)睡眠関連呼吸障害群 中枢性睡眠時無呼吸症候群 チェーン・ストークス呼吸・内科
疾患に基づく中枢型睡眠時無呼吸
高崎雄司、今西愿、別役徹生、玉谷青史
日本臨床 71(5)304-308、2013
5)My Challenge 循環器内科 臨床研究を通じて循環器診療に役立つエビデンスの構築を目指して
後藤 大祐 Circulation up-to-date = サーキュレーション・アップ・トゥ・デート 6
(6)、781-783、2011-12
倫理審査委員会通過課題
2022年 | 課題内容 | 担当者 | 役職 | 情報 公開 |
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10月 | 退院に向けた内服自己管理への取り組み、自宅での内服自己管理について調査し、退院支援につなげる | 小林奨 | 看護師 | - |
高次脳機能障害を抱えた患者へのチームアプローチ、CBAを共通言語とし看護を考える | 小林恵美 | 看護師 | - | |
A病棟でのインシデントレポートに関する意識調査 | 村中、一行 | 看護師 | - | |
12月 | 回復期脳梗塞患者における睡眠脳波を用いた睡眠評価指標と機能転帰との関連性:予備的研究 | 松田恭平 | 医師 | - |
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