東京天使病院看護部 天使のつぶやき
2025.02.25
第55回 高齢者医療に思うこと

看護部長職をするようになってから約20年になる。

前職特養での6年半を除き、病院の看護部長であった期間が長い。高齢者医療についてはある程度理解しているつもりだったが、特養での看護部長体験は、高齢者医療についての私の考えを大きく変えた。

 

一昨年の10月、病院に戻ってみて感じたことは、高齢者医療についての医療者の意識は、私が病院で働いていた頃とさほど変わっていないということ・・・。

 

たとえば高齢者の食欲低下による脱水。病院ではほとんどが24時間キープで点滴をする。認知症の患者さまには身体抑制までして・・・。本当に24時間キープが必要か?日中見守りができる時間帯に数時間の点滴で終了することは不可能なのか?

 

そして尿道バルンカテーテル・・・。心不全等で利尿剤を使用していたとしても、高齢者の場合、バルンを入れることで、尿路感染症のリスクが高まり、抜去後の尿閉にもつながる。高齢者医療において、バルンを入れてまでの尿量管理は本当に必要なのか・・・?オムツの計量では本当にダメなのか・・・?

 

それから経鼻胃管・・・。本当に経口は無理なのか?食事形態や介助方法などについて、STや栄養科と真剣に検討してみたのだろうか…?人生終盤になって、ほんの少量でも好きなものすら食べられない人生なんて、私なら御免こうむりたい。

 

正直なところ私にとっては、疑問やジレンマばかりだ。

 

特養は生活の場所、入居者にとっての安楽は何より最優先だ。そのためには、嘱託医からの指示が出る以前に、「この点滴は昼間の4時間でいいですか?」「この方バルン抜いていいですか?」「食事形態はSTと栄養士で相談して決めてもいいですか?」と看護師主導で、嘱託医へのアプローチが容易にできた。病院はそうはいかない。何をするにも、医師の考え方と指示が優先する。看護師の意見はなかなか通らない。

 

病院での高齢者医療は難しい・・・。

 

病院は確かに治療の場だ。しかしそこがどんな場所であれ、高齢者の安楽と笑顔が最優先されてほしい。病院においては、まだまだ学問的に正しい医療が優先されているように思う。高齢者にとって必要なのは、学問的に正しいかどうかではなく、その人の年齢や生活状態に見合った医療、苦しみや痛みを最小限にとどめ、高齢者が笑顔で生活できる医療のように思う・・・。

 

繰り返すが、病院での高齢者医療についての意識は、残念ながら数十年前と大して変わっていない・・・。

 

看護師は、もっと勇気を出すべきだ。看護師の立場で、医師に物を言うのは本当に勇気を要する。反対意見の時は特に・・・。しかし、自分の正しさを主張するものではなく、本当に高齢な患者さまを思っての発言は、結果がどうあれ議論が可能な環境であってほしいと思う。

 

「早くお迎えがきてほしい・・・」高齢の患者さまからよくこんな言葉を聞く。しかしそれは本音だろうか・・・?誰かの手を借りないと思うように動けないこと、一生懸命生きてきた自分の存在理由が感じられないこと、生きている環境があまりにつらいこと、それらの理由からそんな悲しい言葉が出てしまうのではないのか・・・。

 

看護師の能力や判断力は決して低くない・・・。

 

看護師にはもっともっとできることがあるはずだ・・・。

 

高齢者の笑顔のために・・・。

 

 

 

 

看護部長 本間久美子

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