東京天使病院看護部 天使のつぶやき
2025.01.28
第51回 正義中毒

子供の頃から「嘘をついてはいけない」と教えられて育った。今も、嘘はいけないと思う。嘘をつくと、嘘を隠すためにまた嘘をつく・・・。そしてどんどん自分が苦しくなる。結果的には周りからも信頼を失ってしまう。

私自身も幼い頃からある時期まで、何度か小さな嘘をついた・・・。やはり苦しくなったり、後悔したりした。だから今は、嘘をつかず正直に生きることを信念としている。怒られるのは嫌だが、怒られても正直に話すようにしている。その方が自分に嘘をつかずに済む。名誉挽回、次の機会での汚名返上に向けて、前向きに進むためにも正直に言うようにしている。

 

ただ、方便は別だと思っている。「優しい嘘」と言えるかもしれない。

たとえば、癌であることを知りたくない患者様や、知らせたくないご家族もいる。愛する人に死が近いことを教えたくない・・・という希望で、協力した経験もある。

「優しい嘘」は、相手の人生や思いを尊重する見返りに、自分が苦しむという代償払うことになる。「騙す」訳ではなく、辛さを共有する・・・。全てではないと思うが、嘘をつかれた方は、後から知って温かい気持ちになったり、時間と共につかれた嘘を許せることもあるだろう。これは「優しい嘘つきになる」もしくは「役者になる」ということなのかもしれない。

 

看護師になってかなり年月が経った。私は、医療・看護を受ける患者様やご家族に、正しいことをして行きたい。常にそう思っている。私の座右の銘は、「清く正しく、潔く」だ。過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる。しかし、これは客観的に見ると、すごく暑苦しくて面倒な人のような気がする。

昨年外部研修にいった時に、東京都保健医療大学の教授の講義で、「正義中毒」の話が出た。即座に「私だ!!」と思い、恥ずかしくなった。「正義中毒」は、自分の人生経験や職務経験、そしてその中で自分が学び、分析したものを根拠にして、善悪の物差しを勝手に「正義」だと信じて他者に突きつけることになる。

以前夫から「自分が絶対正しいと思って話すよね」と、言われたことがある。その時は、「だって正しいもの」と言って更にあれこれ根拠を話し、うんざりとした表情をされた。話にならないと思われたのだろう。アサーティブではなかった・・・。これがもし他人だったら、完全に離れていくか、距離を取られていただろう。

今更ながら「正義中毒」という教授のひと言で、私は自分を振り返ることが出来た。恥ずかしかったが、気付かぬままよりは良かったと思っている。

 

日々多くの人との関わりがある。最近は自分と異なる意見や行動について興味が深くなった。「何故そう思うのか?」「何故そうするのか?」を周りの人たちから学びたいと思う。もっともっと正義の引き出しが増えるように・・・。正しい答えは、人の数だけある。患者様をはじめ多くの人の正義を理解して、お役に立てることが増えたら本望だ。時には「私の正義」が誰かの助けになり、誰かの「正義」が私の成長や助けになるのだろう。

 

看護師は法律と看護倫理綱領に基づく「正義」が義務とされている。真面目に、謙虚に、優しさを忘れずに、明日も患者様やスタッフの支えとなる看護師でいたい。そのためには、「アサーティブ」であること・・・「正義感」と共に「社会性」が大切だ。

 

 

                        外来

                         師長 梅村亜記代

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