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私たち医療の専門職にとって何が一番大事だろうか・・・?
入職時オリエンテーションで尋ねると「優しさ」、「愛」、「寄り添うこと」、「思いやり」など、様々な意見が出る。全部正解だ。
それらの意見に加え、専門職としての知識・技術・経験はもちろん重要。しかし長いこと看護師をしてきて「今、何が一番大事か?」と問われたら、私は迷わず「感性と想像力」と答えるだろう。
「患者さまやご家族が自分だったら・・・自分の家族や大切な人だったら・・・」と感じてみること、想像してみること。根底にそれがあれば、自分に欠けているもの、たとえば知識・技術・経験それ以外のものも自分で追い求め、習得するよう努力できるような気がする。
「感性と想像力」の多くは幼少期に育まれているように思う。大人になってから「感性と想像力」を磨くことは、自分で意識しない限りとても難しい。
講義や研修で「感性と想像力」の話をすると、よく質問されるのが「どうしたら『感性と想像力』を伸ばせますか?」ということ・・・。なかなか難しい質問だ。
私が続けている方法は2つ・・・。
ありきたりだが、ひとつは読書。ジャンルはどんなものでもかまわないが、挿絵がないものが良いと思う。読みながら語られている情景や、登場人物の心情を想像してみるのだ。最近はスマホの影響もあると思うが、自分で考える前に写真や動画が目に飛び込んでくる。自分の頭や心で考えたり感じたりする暇がない。自分の頭と心でイマジネーションすること・・・これは「感性と想像力」を育てるのに大人になってからでも役に立つように思う。
ふたつ目は音楽を聴くこと。今流行りのアップテンポの曲やにぎやかな曲ではなく、歌詞やメロディーが美しいものが良いと思う。私は通勤が長いので、その間80年代から90年代の音楽を聴いている。ちょっと恥ずかしいが挙げてみると「さだまさし」、「中島みゆき」、「イルカ」、「小椋佳」、「小田和正」、「大滝詠一」・・・等々。難しい単語や言い回しもあるが、わからないものについては自分で調べてみる。また何度か聞いているうちに理解できることや気づくこともある。
(余談だが、これらのアーテイストたちは、今もテレビやライブなどで活躍中だ。でもなぜか最近の曲は心に響かない。若いころ・・・いろんなことに悩み渇望していた時期に作られた曲がいいのだ。人間は富や名声を手に入れると、輝きが薄れてくるのかもしれない。こんなことを言ったらご本人たちはご立腹だろうが・・・。)
私の場合、このふたつで還暦を過ぎた今も、何とか「感性と想像力」を保とうとしている。すべての人に当てはまることではないと思うが、やってみようと思う人は試してみてはどうだろうか・・・。
人生大抵のことはトレーニングだ!
「感性と想像力」を持ち合わせているか否かは、患者さまやご家族には容易に伝わるようだ。まずこちらの顔と名前を憶えてくれる。患者さまやご家族とのトラブルが少なくなるし、信頼関係が築きやすくなる。そうすると対話することが苦痛ではなくなり、自分も楽になる。
そして3K(きつい・汚い・給料安い)、5K(きつい・汚い・給料安い・結婚できない・化粧が載らない)、7K(7Kって何だったっけ・・・?)と言われる仕事にやりがいを感じるようになる。
「感性と想像力」はやっぱり大事だ。
最近は老眼になり、読書は厳しくなった。でも音楽を聴くことはできる。これだけは可能な限り、続けて行こうと思っている。
看護部長 本間久美子
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